山口県宇部市の歯科医院「歯科・沖田オフィス」院長の沖田です。
2014年11月に開院した当院も気付けば10年以上が経過し、もうすぐ11年になります😲
時間が経つのはあっという間ですが
そんな開業時から当院は歯科用CTを導入しておりました( ^ω^ )
通常の歯科だけではなく、入院も可能な大学や病院の口腔外科に勤務していたので、親知らずの抜歯やインプラントなどはもちろん、難しい診断や根管治療にもCTは非常に有用なので。当初の予定を変えて借入を増やして開業時に無理してCTを導入したのを覚えています😅
10年経ってもまだ使用はできたのですが、付属のパソコンのシステムの問題もあってこの度歯科用CTの入れ替えを行いました💸
今回は歯科用CTについてと当院が導入したCT(Axeos:アクセオス)について書いてみます。
目次
歯科でのレントゲンについて
レントゲンは骨の状態や歯の状態など、硬組織と呼ばれる硬い部分を見るためのものです(軟組織と呼ばれるお肉や粘膜などを見るのはMRIなどを用います)。
撮影には大きく分けて2種類あります。
2Dと呼ばれる平面的なレントゲンか、CTのような3Dで立体的なレントゲンの2つになります。
何を見たいか、どこを詳しく見たいかでさらに使い分けが必要です。
2D撮影
主に用いるものとして
デンタル:2〜3歯のみを見るための小さなレントゲン
パノラマ(パントモと呼ぶ場合もありますが今回はパノラマで統一):顎の関節や口の中全体を1枚で見るための大きなレントゲン
セファロ:主に矯正治療(←押して頂くと矯正ページへ)の際に使う規格化されたレントゲン撮影で、一定の距離と顔の傾きなどを出来るだけ合わせて撮影し、歯の傾きや骨格的な問題などの診断、矯正前後の比較をするためのレントゲン
その他に顎関節を見るための撮影方法などもありますが、矯正治療以外では主に上の2つのデンタル撮影やパノラマ撮影を用いられることが多いです。
使い分けとしたら、問題のある部位が多くありそうだったり、歯周病による骨の状態の確認、子供であれば永久歯が全てあるか、歯茎や骨の下に埋まっている親知らずなどの埋伏歯の有無など、大まかに口全体を把握したい(スクリーニング検査などとも言われます)場合はパノラマ撮影を行います。
原因と思われる歯を細かく見たい場合は、特定の歯を中心にデンタル撮影をします。
これらは保険診療でも認められており、特定の条件でこの撮影をしないといけないなどのルール(根管治療後の確認は基本的にはデンタル撮影で確認など)があったり、条件によってはパノラマ撮影は認められなかったり、保険診療では患者さんの希望や医院の判断だけでは撮影できないことがあったりもします😰
3D撮影(CT)
こちらは3次元的に骨や歯を見ることが可能で、2Dの2次元的な撮影ではわからない親知らずなどの埋伏している歯の位置、骨の厚みや幅、骨の内部の神経や血管が入っている空間の位置、腫瘍などが疑われる場合の位置や骨の中なのか外に出てきているものか、などなど詳しい情報を沢山見ることができます。
CTと通常のレントゲンの精度を比べてみると
通常のレントゲンでも病変などはある程度把握できますが、骨の硬さや厚み、見たい位置(パノラマは首の骨などのせいで前歯の精査には不向きだったり、奥歯や隠れた親知らずなどにデンタル撮影をしようとしても器具が入らない場合やえずく(嘔吐反射)方もおられます)、病変の詳細な大きさや広がりなどはCT撮影が向いていることがあります。
またCTでの病変などの評価を100%とした場合、デンタルが55%程度、パノラマで28%程度というデータもあり
通常の2Dレントゲンではどうしても発見できない病変などもあるので、必要な時はCT撮影が必要だと考えています。
最初からCT撮影だけじゃダメなのか?
CTの有用性は病変の発見、病変の大きさや位置、親知らずなどの埋伏歯の位置、骨の幅や厚み、歯の周りの骨の状態など、情報量が多く様々なものが見えます。
なので、最初からCTだけで良いのでは?と思われるかもしれません。
なぜ最初からCT撮影をしないかというと、やはりレントゲン被曝があるからです。
世界の放射線学会などの指針では、倫理的に被曝を考えてもメリットがある場合はCTを撮影をしましょうということになっています💡
なので、最初は通常のレントゲン撮影、それで疑わしい病変や隠れた親知らずと神経や血管が近い可能性が疑われる場合、インプラント治療で骨の状態の確認が必要だったりする場合はCT撮影をします。
また、保険治療でもいきなりCT撮影をすることはできません。
ただし、医科の人間ドックや健康診断など、保険診療ではなくレントゲン被曝のことがわかった上でしっかり検査をしたい場合などの歯科ドックや自由診療での撮影はいきなりCT撮影をすることはあります。
CTのメリット・デメリット
メリット
・上記のように病変の有無、位置や場所、原因がどこにあるかなど、精度が高い。
・親知らずの位置、親知らずと血管や神経の入った管との位置関係などの精査ができる。
・顎関節の変形なども3次元的な評価が可能
・骨の3次元的な形や状態が見れる
などなど、とにかく通常のレントゲンでは見ることが難しいものが見えます。
デメリット
・通常のレントゲンより被曝がある(ちなみに医科用のCTに比べて歯科用CTは撮影被曝はかなり少ないです)
・一部保険適応はあるが、費用がかかる(他の検査も必要ですが、CTのみで3割負担で3,500円程度かかります)
保険診療でCT撮影をする場合
・大臼歯(奥歯)で複雑な根の形だったり、根尖病変(根の先の病気)の難治性で精査が必要な場合でマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)での治療が必要と思われる場合。
・骨内の腫瘍などが疑われる場合
・親知らず(←押して頂くと親知らずのページへ)や過剰歯などの歯茎や骨の中にあって口腔内に見えていない歯の抜歯が必要な際の位置確認や、神経や血管などとの距離を調べる必要がある場合
・その他、通常のレントゲンでは不明な病変を疑う場合
などで、歯科医師がCTが必要と判断した際は可能となりますが
実際は、保険診療で認められるかどうかは実際に診療後のレセプトを見られる審査員の方の判断によることもあります😰(審査で何ヶ月か後にやはり保険診療では認めないと言われることもあります。。。)
撮影するのはメリットがある場合なので、上記に当てはまっても全て撮影する訳ではなく、当院では必要性に応じてしかCT撮影はお薦めしておりません。
歯科医師がCT撮影が必要と思っても患者さんに拒否されたら撮影はできません(ただし、その場合の撮影しないリスクをご了承の上での治療、もしくは、当院では治療できないと判断しCT撮影なしで治療してもらえる歯科医院さんをご自身で探してもらう可能性もあります)。
当院では必要に応じてしかCT撮影はしませんが、親知らずが神経や血管と近い可能性、奥歯の根管治療、腫瘍などを疑う場合、などは撮影させて頂くことが多いです。
その他、自由診療含めて当院でCT撮影をする場合
保険診療で認められるものはもちろんですが
保険診療以外で以外に撮影することがあります。
・精密根管治療(←押して頂くと根管治療のページへ):自由診療でのラバーダム、マイクロスコープを用いた根管治療の場合はCT撮影も含めて治療
・インプラント治療(←押して頂くとインプラントのページへ):インプラント予定の部位は必ずCT撮影をします(裁判での判例でもCTなしのインプラント治療は歯科医師側の責任を追求された例もあるため)。骨の状態によってGBR(骨造成)の必要性の有無や、インプラントのガイドを作成するためにも必要です。また、上の奥歯で骨の高さがなく上顎洞という空洞まで近い場合はサイナスリフトと呼ばれるオペが必要となるかの精査も行います。
・歯科ドック:健診には保険適応は認められていないため、口腔内の健診や口腔癌検診などをご希望の際はCT撮影をすることがあります。
・口腔内のオペ後で、術後の経過で通常のレントゲンでは術後の経過がわからない場合はCT撮影での経過観察を行うことがあります。
今回当院が導入したAxeos(アクセオス)について
当院とデンツプライシロナ社について
レントゲンはレントゲン博士が発見されたそうですが、レントゲン装置を開発したのがドイツのシーメンス社です。
そのシーメンス社から歯科部門として派生したシロナ社とデンツプライ社が合併してできたのがデンツプライシロナ社になります。
当院が開業した2014年当時はまだシロナ社時代で、シロナ社の治療用のユニット、歯科用CTなどを導入しておりました。
確か2015年、日本の著名な先生方と一緒に海外の学会ついでにオーストリアのザルツブルクにあるシロナ本社に寄って行こうという企画に参加させて頂く機会がありました。その飛行機に乗る直前にシロナ社とデンツプライ社が合併したと聞き、合併直後に本社に行くという稀な機会を頂いたことを覚えています😅
Axeos(アクセオス)

こちらが当院に新しく入った歯科用CTです。
緊張をほぐすため??なのか、背面から色々な色が出ています🌈
シーメンス社から派生したデンツプライシロナのレントゲンに関しては世界中で昔から定評があり、画像が良いのはもちろんですが
通常でも低被曝であることが最大のメリットかもしれません🤗
我々は日常的に自然被曝をしておりますが、通常のCT撮影でもその年間被曝量の30分の1以下、東京〜ニューヨーク間の飛行機の往復での被曝量の2分の1以下です。
さらにこちらのAxeos(アクセオス)という機種は低被曝モードがあります。
お子さんの撮影や、細かな病変を診なくて済む場合はこちらの低被曝モードで撮影させて頂けると安心かもしれません😌
メーカーさんの話では、低被曝モードのCT撮影は、通常の2D撮影のパノラマよりも被曝量が少ないそうです🫢
また、撮影範囲が小〜大まで選べて、最大17cmまで撮影可能なので、上下の顎や顎関節、気道までチェックできます!
ソフトウェア
インプラント
CTで骨の状態を確認し、各インプラントメーカーのインプラントの長さや太さなどの形状を当てはめてシミュレーションするソフトが内蔵されております。
そのデータとセレック(←押して頂くと審美歯科とセレックのページへ)で作成した失った歯の形をコンピューター上でマッチングさせ、インプラントを安全に埋入するためのガイド(セレックガイド)を作製できます

気道解析
CTの撮影範囲を広げることによって咽頭の方まで見ることが可能となり、そこから気道の広さや形などを確認出来ます。
これによって、現代病として突然死などが問題になっている睡眠時無呼吸症候群(←押して頂くと睡眠時無呼吸症候群のページへ)の可能性を見たり、睡眠時無呼吸用の口腔内装置を入れて気道がどう変わるかなどを確認することが可能です。
また、小児期で顎や顔面の成長が弱く、気道が狭くなっていることが確認できた場合は筋機能訓練や、プレオルソを含めた小児矯正治療(←押して頂くと小児歯科・小児矯正ページへ)などで成長を促進させ気道を広くすることによって頭や体の成長につなげることもあります。


このように気道の状態を3次元的に見やすくして、どこが狭いかなども把握できます😲
その他
顎関節の状態や、矯正の際に骨格を診断するセファロ撮影なども可能です。

このように撮影範囲が広いので顎関節の形態の確認もできます.
他にCT撮影ではないですが、今回セファロと呼ばれる規格写真撮影もオプションで取り付けて撮影が可能となっているので


このようなレントゲン撮影も可能で、骨格的な問題を考えて矯正治療などを行います。
セレックとの連携
前のCTの頃から当院ではやっておりましたが
デンツプライシロナ社はセレックという院内で被せ物などを作製できるCADCAMシステムがあります。
このCT撮影のデータとお口の中のデータを合わせてインプラント治療のシミュレーションを行った後に、その計画通りにインプラントを入れるためのインプラントガイドも作製可能です😊
コストはかかりますが、安心・安全なインプラント治療のためには必須なものになります💡
まとめ
今回導入したセファロ付きCTでできることが増えております。
矯正治療について:診断に活用できるセファロと以前から当院で行っているマウスピース矯正(アライナー矯正)の計画時に口腔内の歯のデータとCTの骨の状態をマッチングさせて安全な矯正治療が可能になりますし
気道解析ソフトについて:突然死のリスクや急な眠気による事故など、睡眠時無呼吸症候群で起こる様々な問題も気道と関係していたりするので、気道の広さを確認できるソフトとそれを改善させる可能性がある矯正治療や噛み合わせ治療、また睡眠時無呼吸の際に歯科で行う口腔内装置の作成前後の変化の確認にも使えます
インプラント治療について:セレックと併用することで、口腔内スキャナーでの噛み合わせを含めた口腔内の状態とCTによるインプラントを埋入する骨の状態を精査して、設計した位置からインプラントがズレないようにするためのインプラントガイドの作成も可能(こちらも当院では以前からやっていましたが😅)
などなど単なるCT撮影だけではなく、様々なことに活用できます。
今後はさらに活用範囲が広がってくるかと思うので
メーカーさんの情報を聞きつつ、新しい方法を取り入れられるように今後も知識と技術の研鑽だけではなく設備投資についても頑張って参ります💪
                                

